日常会話やインターネットの言説で最も混同されやすいのが、被告人と被告の違いです。両者は漢字一文字の違いですが、扱われる法体系そのものが根本から異なります。
端的に整理すれば、刑事裁判と民事裁判の違いに直結しています。「被告人」は刑事訴訟法に基づき、国家刑罰権を行使すべきか否かを審理する刑事裁判の対象者です。対して「被告」は、民事訴訟法に基づき、個人や企業の間で発生した金銭トラブルや損害賠償請求を争う民事裁判において、訴えを起こされた相手方を指します。
民事裁判の「被告」は、不法行為や契約違反を主張されて訴訟を起こされた側に過ぎず、罪を犯したと疑われているわけではありません。離婚訴訟や交通事故の過失割合を争う裁判、遺産相続のトラブルで訴えられた当事者もすべて「被告」と呼ばれます。しかし、テレビや新聞などの報道メディアでの使われ方においては、「〇〇被告人」と呼ぶと語感が硬く尺や行数を圧迫することから、刑事事件の被告人に対しても慣例的に「〇〇被告」と略して報じられています。この報道現場の実務的省略が、一般市民の間に「被告=悪事を働いた犯罪者」という強固な誤解を植え付ける主因となっています。