なぞなぞ歌という文学的側面の裏で、歴史研究者やミリタリーファンの間で最も激しい議論を呼んできたのがハンプティダンプティの大砲説です。この仮説の舞台は、17世紀半ばのイギリス内戦(ピューリタン革命)における1648年の「コルチェスター包囲戦」にまで遡ります。
チャールズ1世を支持する騎士党(王党派)が立てこもるコルチェスターの街を、オリバー・クロムウェル率いる議会派軍が11週間にわたって兵糧攻めにしました。この防衛戦の際、王党派はセント・メアリー・アット・ザ・ウォールズ教会の高い塔の上に、当時としては規格外の威力を誇る巨大な大砲を設置。この巨砲の通称が「ハンプティ・ダンプティ」であったと伝えられています。
教会の塔壁(wall)から議会派に砲弾の雨を降らせた巨砲ですが、議会派による集中砲撃で塔の土台が粉砕され、大砲は城壁から地上へと真っ逆さまに転落(a great fall)。地上に激突して砲身や台座が完全に大破したため、王党派の騎士や兵士たち(All the king's men)が総出で修復を試みたものの、二度と持ち上げて発射台に戻すことはできませんでした。この凄惨な敗北の記憶を、庶民が童謡に偽装して語り継いだという解釈は、極めて説得力のある軍事史的エピソードとして語られています。