鳩の湯を語る上で欠かせない転換点が、2020年4月に実施された全面リニューアルです。手がけたのは、都内の数々の名作デザイナーズ銭湯を世に送り出してきた建築家・今井健太郎氏。かつての伝統的な宮造り銭湯の風情をリスペクトしつつ、現代の生活者が求めるミニマリズムと温もりを高度に融合させました。
多くの銭湯が直面する設備の老朽化や後継者問題という構造的課題に対し、鳩の湯の経営陣が決断したのは単なる修繕ではなく、「次の半世紀にわたって世代を超えて愛される場」の再定義でした。外観は鳩をモチーフにした象徴的な暖簾と柔らかな木目調のルーバーが迎えるモダンな佇まいで、一歩足を踏み入れれば、間接照明が優しく照らす洗練されたフロントロビーが広がります。
浴室に配された壁画は、富士山をモチーフにしながらも現代アートのようなグラフィカルな筆致で描かれ、伝統と革新が見事に調和しています。単におしゃれなだけでなく、脱衣所から洗い場、浴槽、サウナ室、水風呂、外気浴スペースに至る利用者の動線が1ミリ単位で計算し尽くされている点が、舌の肥えたサウナーたちをうならせる決定的な理由です。