ブルシットジョブ(Bullshit Jobs)という言葉は、故デヴィッド・グレーバー教授が2013年に発表した論考、および2018年の著書『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』によって世界中に広まりました。その核心的な定義は、「被雇用者本人ですら、その存在を正当化できないほど、完全に無意味で不必要、あるいは有害である有給の雇用形態」です。最大の特徴は、周囲に対して「価値ある仕事をしているフリ」を演じ続けなければならない点にあります。
ここで多くの人が混同しやすいのが、いわゆる「シットジョブ(クソな仕事 / Shit Jobs)」との違いです。社会学的な観点から両者を比較すると、その性質は完全に対極に位置しています。
清掃作業員やゴミ収集、看護師や配送ドライバーといった職種は、肉体的に過酷で賃金が抑えられがち(シットジョブ)ですが、彼らが1週間ストライキを行えば都市機能は瞬く間に麻痺します。一方で、大手企業の本社フロアに詰める無数の調整役やレポート作成係が1か月仕事を放棄しても、社会的な実害はほとんど生じません。この痛烈な事実こそが、グレーバーの指摘した近代労働のパラドックスです。