「偕老同穴(かいろうどうけつ)」という言葉を辞書で引くと、「夫婦が仲良く共に老いを迎え、死後は同じ墓穴に葬られること」と記されています。生々世々にわたる強い愛の誓いや、極めて強固な夫婦の契りを象徴する言葉として、現代でも婚礼のスピーチや祝電で頻繁に用いられています。
この四字熟語の文献上の語源は、紀元前の中国で編纂された最古の詩集『詩経(邶風・撃鼓)』にある一節「恵(けい)を結びて偕(とも)に老い、死しては穴(あな)を同じくせん」に由来します。戦場に赴いた兵士が故郷の妻を想い、生きて共に老い、死後は同じ墓に入ろうと誓い合った切実な情愛を詠んだものでした。
では、なぜこの古典の言葉が、水深数百メートルの深海に生息する海綿動物の名前になったのでしょうか。江戸時代から明治初期にかけての本草学・博物学の記録によると、相模湾などの深海から引き揚げられた奇妙な白い海綿の内部に、必ずと言っていいほど「オスとメスのエビが寄り添うように入っていた」ことから、学者や好事家たちが『詩経』の故事にちなんで「カイロウドウケツ(偕老同穴)」と命名したと伝えられています。