緑の葉物野菜を前にした瞬間、露骨に顔をしかめる幼児たち。保護者へのアンケート取材でも、「細かく刻んでハンバーグに入れても水菜だけ器用に避ける」「口に入れてもいつまでもクチャクチャと噛み続け、飲み込めずにペッと出してしまう」という悩みが上位を占めています。現場の小児科医や味覚研究の専門家によると、幼児食水菜食べない理由には、子供特有の生物学的防衛本能が密接に関わっています。
人間の味覚は、酸味を「腐敗」、苦味を「毒物」として本能的に警戒するようにプログラミングされています。成人に比べて味蕾(みらい)の密度が約2倍から3倍も濃密な乳幼児の舌にとって、水菜に含まれる微量のアブラナ科特有の苦味成分(グルコシノレートなど)は、大人が想像する以上の激しい刺激として知覚されます。大人は「みずみずしい爽快な風味」と認識できても、幼児の脳には「危険な異物」と警報が鳴るわけです。
さらに見逃せないのが、咀嚼(そしゃく)力の発達段階です。水菜の茎はシャキシャキとした食感を保つ強固なセルロース繊維で構成されています。奥歯が生えそろっていない3歳前後の子供や、咀嚼筋が未発達な低学年児にとって、縦に長い繊維は「噛み切れない異物」そのもの。口の中に残り続ける不快な筋っぽさが一度トラウマになると、見た目だけで拒絶反応を示す「フードネオフォビア(新奇恐怖症)」へと発展します。大人の基準で「シャキシャキ感を残す」調理を施すことこそが、子供の野菜嫌いを決定づけていたのです。