世間が息をのんだ写真集『MANAMI BY KISHIN』。その制作現場は、一般的なグラビア撮影の和気あいあいとしたムードとは一線を画す、極限の緊張感に包まれていました。当時のインタビューや関係者の証言によると、現場入りした篠山紀信氏が橋本マナミに最初に突きつけたのは、「きれいにポーズを取ろうとするな」「カメラを意識した作り笑いは一切いらない」という厳格な要求でした。
ロケーションに選ばれたのは、生活感が色濃く残る古い日本家屋や温泉旅館、そして荒涼とした自然光が差し込む廃墟空間。篠山氏はシャッターを切る際、細かな身体の角度を指示するのではなく、「その空間にただ女として存在すること」を求め続けたといいます。衣装を1枚ずつ脱ぎ捨てていく過程で、篠山氏は突如として「そのまま外に出てごらん」「濡れた畳の上に全身を投げ出してごらん」と、予定調和を破壊する指示を矢継ぎ早に出しました。
橋本マナミ自身、後にテレビ番組や自著の手記で当時の心境をこう振り返っています。最初は恥じらいや「良く見られたい」というアイドル出身特有の防衛本能が働いたものの、篠山氏の凄まじい集中力とシャッター音に呑まれるうち、自意識の殻が粉々に砕け散る感覚を味わったと明かしています。極寒の板間で震える肌の質感、汗や吐息の生々しさを逃さず捉える篠山氏のレンズに対し、彼女は「すべてをさらけ出さなければ、この巨匠には見透かされる」と観念したのです。この現場での心理的ブレイクスルーこそが、ページをめくる読者を圧倒する凄みのある色気へと昇華されました。