春先や秋口の改変期になると、ニュースの経済面を飾るのが「アイスクリーム各社による一斉値上げ」の発表です。明治の『エッセル スーパーカップ』、森永乳業の『ピノ』や『MOW』、森永製菓の『チョコモナカジャンボ』、江崎グリコの『ジャイアントコーン』など、各社の看板商品が数週間のズレもなく10円〜20円単位で引き上げられる様子は、消費者から見れば「足並みを揃えている」と映っても不思議ではありません。
Twitter(現X)をはじめとするアイスの値上げに対するネットの反応を見ても、「メーカー同士で裏協定を結んでいるのではないか」「これこそ絵に描いたようなカルテルではないか」といった投稿が散見されます。しかし、結論から言えば、現在の値上げラッシュについてアイスの価格カルテルの真相を精査すると、違法な密約によるものとは言えません。
経済学や法学の領域において、これは「意識的並行行為(コンシャス・パラレリズム)」や「追随型値上げ」と呼ばれる現象です。業界のトップ企業(プライスリーダー)が原価上昇に耐えかねて価格改定を公表すると、同じコスト構造を抱える競合他社が「今なら値上げしても自社だけシェアを落とすリスクが低い」と判断し、雪崩を打って後を追うメカニズムが働いています。事前の違法な意思疎通(合意)がない限り、単に他社の公開情報を分析して自社の価格を追随させる行為は、独占禁止法上直ちに違法とはみなされません。