歴史的な成り立ちとは対照的に、2020年代半ばを生きる私たちの体感年齢は大きく変化しました。文化庁が実施した「国語に関する世論調査」の過去データや民間各社の意識調査を見ても、「初老は何歳くらいを指すと思うか」という問いに対して、「60歳前後」と回答する割合が全体の過半数(約60〜70%)を占め、「40歳前後」と答えた人は数%程度にとどまります。
この感覚のズレを象徴するのが、日常的に使われる「アラフォー」とのニュアンスの差です。両者の違いを整理すると、単なる言葉の言い換えではない社会的な位置づけの違いが浮き彫りになります。
メディアや日常会話における「アラフォー(Around 40:35〜44歳前後)」は、若々しさ、消費の主役、トレンドの発信者といったアクティブで前向きな文脈で用いられます。一方、「初老」にはどこか枯淡の境地や体力の低下、落ち着いた身のこなしといったイメージが付随します。40歳を迎えた本人が自らを「アラフォー」と呼ぶことに抵抗は少なくても、「初老」と呼ばれることに強い心理的抵抗を覚えるのは、言葉がまとう空気感の差に起因します。
性別による受け止め方の差異も見逃せません。男性の場合、40代は管理職への昇進や責任の増大によって「中堅からベテランへの移行」として受け止められやすい側面があります。他方、女性に対して「初老」という言葉を用いることは、エイジングに対する極めてデリケートな価値観が絡むため、タブー視される傾向がより顕著です。現代のジェンダー観やアンチエイジング文化の浸透も相まって、男女ともに40代を初老と呼ぶ実態はほぼ消滅したと捉えるのが妥当です。