肺胞換気量の計算式と死腔の真実|浅く速い呼吸で酸素不足に陥る臨床の盲点

肺胞換気量の計算式と死腔の真実|浅く速い呼吸で酸素不足に陥る臨床の盲点

肺胞換気量の計算式と死腔の真実|浅く速い呼吸で酸素不足に陥る臨床の盲点の要点を詳しく解説してご紹介します。

「息が苦しい」と訴える患者が過呼吸のように肩を上下させ、呼吸数を増やしている場面を想定してください。一見すると、呼吸数が増えているため空気は十分に取り込まれているように思えます。しかし、ここに呼吸生理学最大の落とし穴が存在します。

分時換気量が全く同じ「毎分6,000mL」であっても、呼吸パターンによって肺胞換気量がどう変化するかをシミュレーションしてみます。

  • パターンA【深くて遅い呼吸(深呼吸)】
    1回換気量 1,000mL、呼吸数 6回/分
    分時換気量 = 1,000 × 6 = 6,000mL/分
    肺胞換気量 = (1,000 − 150) × 6 = 5,100mL/分(有効換気率 85.0%)
  • パターンB【標準的な安静呼吸】
    1回換気量 500mL、呼吸数 12回/分
    分時換気量 = 500 × 12 = 6,000mL/分
    肺胞換気量 = (500 − 150) × 12 = 4,200mL/分(有効換気率 70.0%)
  • パターンC【浅く速い呼吸(促迫呼吸・頻呼吸)】
    1回換気量 200mL、呼吸数 30回/分
    分時換気量 = 200 × 30 = 6,000mL/分
    肺胞換気量 = (200 − 150) × 30 = 1,500mL/分(有効換気率 25.0%)
  • パターンD【極度の浅速呼吸】
    1回換気量 150mL、呼吸数 40回/分
    分時換気量 = 150 × 40 = 6,000mL/分
    肺胞換気量 = (150 − 150) × 40 = 0mL/分(有効換気率 0%)

死腔の容積(約150mL)は気道という解剖学的構造によって固定されているため、1回換気量が小さくなればなるほど、吸気中に占める死腔の割合が跳ね上がります。パターンDのように1回換気量が死腔量と同等以下に落ち込んだ場合、どれほど必死に呼吸数を増やしても、新鮮な空気は気管や気管支を行き来するだけで肺胞には1ミリリットルも届きません。外見上は激しく呼吸しているにもかかわらず、生体内では完全に「窒息」している状態が生じるのです。

集中治療や救急の現場で頻呼吸の患者に対して単に酸素マスクを当てるだけでなく、胸郭の拡張度(1回換気量)を改善させる介入が最優先される理由はここにあります。

山本 拓海
著者

山本 拓海

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。