本作が公開から四半世紀近く経とうとする今も「屈指の号泣映画」と評される最大の要因は、サトシではなく、旅の年少メンバーであるマサトを実質的な主人公に据えた点にあります。まだ自分のポケモンを持つことができない幼いマサトにとって、ダイアンの持つ「眠り繭(ねむりまゆ)」から自らの呼びかけによって目覚めたジラーチは、初めてできた対等な親友でした。
物語の根底に流れるのは、「7日間が過ぎれば千年間の眠りにつく」という冷酷なまでのタイムリミットです。発達心理学において、児童期前期の子供は「死や別離の不可逆性」を直感的に理解し始める重要な転換期にあります。マサトは当初、ジラーチとの永遠の別れを受け入れられず、感情を爆発させて拒絶を示します。サトシがかつてバタフリーやリザードンと別れた経験を静かに語りかけ、先輩としてマサトの痛みに寄り添うシーンは、旅の成長譚として非常に秀逸です。
千年の眠りに就く直前、マサトは自分の寂しさを押し殺し、「ジラーチ、大好きだよ」と笑顔で送り出す決意を固めます。精神医学における「グリーフワーク(喪失の受容プロセス)」を、アニメーションという平易な表現で見事に描き切っているからこそ、親となったかつての子供たちも我が子の成長と重ね合わせ、胸を締め付けられるのです。