本作が他のダークサスペンス漫画と一線を画す最大の要因は、作中に登場する外道たちの犯行手口や動機が、現実の日本社会で起きた凶悪事件を克明にトレースしている点にあります。作者の渡邊ダイスケ氏は、綿密な裁判資料や報道記録をベースにストーリーを構築しており、司法の限界によって減刑されたり、少年法に守られて実質的な罪を償わなかったりした加害者たちの姿を冷酷にあぶり出しました。
例えば、作中で描かれた少年グループによる凄惨なリンチ殺人事件は、2015年に神奈川県で発生した「川崎中1男子生徒殺害事件」の構図と極めて強い類似性を持っています。加害少年たちの更生可能性を優先し、遺族の無念を置き去りにする法体制に対し、カモとトラが下した過激な鉄槌は、当時の世論が抱いていた言葉にならない憤りを代弁するものでした。
さらに、東名高速で起きた悪質なあおり運転致死傷事件、座間市で発生したSNSを悪用した連続殺人事件、さらには脱法ドラッグによる暴走事故など、平成から令和にかけて世間を騒然とさせた事件の暗部が容赦なく描かれます。読者が感じる強烈な不快感と恐怖は、それらが決してフィクションの絵空事ではなく、「明日、自らの身に降りかかるかもしれない現実の地獄」であるという痛烈な自覚から生じているのです。