爪周囲炎を引き起こす直接の病原体は、皮膚の常在菌である「黄色ブドウ球菌」や「レンサ球菌」が主流です。水仕事が多い環境では緑膿菌やカンジダ真菌が関与する慢性型も見られますが、いずれにせよ健康でバリア機能の保たれた皮膚に菌が付着しただけでは発症しません。菌が侵入するための「物理的な突破口」が存在することが発症の決定打となります。
佐賀県の唐津城内病院をはじめとする専門医療機関の報告でも、最大の原因として挙げられているのが以下の日常的な行為です。
第一に「ささくれ(さかむけ)を無理に引っ張ってむしる行為」です。皮膚の表面だけでなく真皮層まで裂けてしまい、無防備な創傷面が剥き出しになります。第二に「深爪」です。爪の角を深く切り落とすと、歩行時や指先を使う際に皮膚が盛り上がり、残った鋭利な爪の端が皮膚に突き刺さって微小な傷を作ります。第三に「爪を噛む癖」や「甘皮(キューティクル)の過度な処理」です。唾液中の雑菌が傷口に入り込むほか、甘皮を押し上げすぎることで爪母(爪を作る部分)が露出し、細菌の温床となります。
さらに臨床現場で頻繁に見られるのが、「巻き爪(湾曲爪)」や「陥入爪」との併発です。専門医の間でも両者は明確に区別されていますが、巻き爪によって内側に巻き込んだ爪が爪郭部の皮膚を常に圧迫・刺激し、そこに深爪が重なることで皮膚に爪が食い込む「陥入爪」へと悪化します。傷口から細菌が侵入すれば、難治性の爪周囲炎が完成します。
再発を防ぐための日常予防策は明快です。手洗い・入浴時に指先の汚れを優しく洗い流して清潔を保つこと、入浴後にハンドクリームやネイルオイルで爪周りを保湿すること、そして爪を切る際は角を落としすぎず四角い形に整える「スクエアオフ」を徹底することが、感染経路を根本から遮断する防壁となります。