志願変更をめぐる現場の空気感は、ネット上の掲示板やSNSで飛び交う無責任な情報とは大きく乖離しています。那覇市内の大手進学塾で長年指導にあたる教室長は、取材に対して次のように現場の苦悩を語りました。
「初回の倍率発表当日、保護者からの電話回線は鳴り止みません。『1.5倍を超えたから首里に下げた方がいいのか』『那覇国際のこの順位では無理か』とパニックになる方が続出します。しかし、安易に志願変更書類を出した瞬間に、精神的なモチベーションを崩して試験当日に本来の実力を出せなくなる受験生をこれまで何十人も見てきました。下げる決断にも、留まる決断にも相応の覚悟が要ります」
また、昨年度に開邦高校を受検し、初回倍率1.5倍超えのプレッシャーを耐え抜いて合格した元受検生の手記には、当時の生々しい葛藤が記録されています。
『周りの友達が次々と志願変更の手続きを取っていく姿を見て、教室にいるだけで手が震えました。塾の先生に“自分の持ち内申なら当日250点を取れば倍率に関係なく枠内に入れる”と言われ続け、最後は倍率の数字を視界から消して過去問演習に没頭しました。倍率を見て動揺している時点で、相手の土俵に乗せられているのだと気付きました』
一方で、大手掲示板やSNSでは「倍率1.1倍の中堅校へ安全策で落としたはずが、同じように落としてきたハイレベル層が多すぎて不合格になった」という悲痛な書き込みが後を絶ちません。現場の観察から明確に見えるのは、「倍率という表面的な数字の上下」に過剰反応した家庭ほど、後手に回って戦略的な失敗を招いているというシビアな現実です。