風邪の初期症状が治まった後も「咳き込んでえずく」状態が2週間以上続く場合、一般的な急性上気道炎ではなく、特定の基礎疾患が関与している可能性を疑う必要があります。臨床現場で特に頻度の高い4大原因を分析します。
1. 咳喘息(Cough Variant Asthma)
ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴や呼吸困難を伴わず、乾いた空咳(からぜき)だけが8週間以上続く慢性咳嗽の代表格です。気道粘膜に好酸球性の慢性炎症が起きており、冷たい空気、エアコンの風、タバコの煙、会話、香水などのわずかな刺激で咳発作のスイッチが入ります。一度発作が始まると息を吸う間もないほど咳が連続し、気道が締め付けられる感覚とともに激しくえずきます。適切な吸入ステロイド治療を行わない場合、成人の約30〜40%が本格的な気管支喘息へ移行するという臨床データが日本呼吸器学会から報告されています。
2. 逆流性食道炎(GERD)・喉頭胃食道逆流症(LPRD)
胃酸や消化酵素が食道を逆流し、下部食道粘膜の迷走神経終末を刺激することで反射的に咳を引き起こす病態です。酸が喉頭(のど仏の周辺)まで達する「喉頭胃食道逆流症」では、喉の異物感(ヒステリー球感)、声がれ、頻繁な咳払いとともに、食後や横になった瞬間に激しくえずくという特徴的なパターンを示します。典型的な胸やけ症状を自覚しない「無症候性逆流」の患者も全体の約3割を占めており、見落とされやすい疾患です。
3. 後鼻漏(Postnasal Drip)
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)、あるいは好酸球性副鼻腔炎によって生じた粘り気の強い鼻汁が、喉の奥へと絶え間なく垂れ落ちる状態です。睡眠中は喉の奥に鼻汁がプールの底のように停滞し、起床時や体位変換時にそれが一気に気管口を刺激します。喉にへばりついた痰を排出しようと激しく咳き込み、「オエッ」と嗚咽を漏らしながら透明〜黄色の粘稠痰を吐き出すという経過を辿ります。
4. 成人の百日咳・マイコプラズマ肺炎
感染症の中でも、えずくほどの激しい咳を特徴とするのが百日咳菌や肺炎マイコプラズマです。特に百日咳は乳幼児の病気と思われがちですが、成人におけるワクチンの抗体価低下に伴い、20代〜50代の感染例が多数報告されています。百日咳では「連続する激しい咳込み(スタッカート)」の直後に「ヒュー」と息を吸い込み、そのまま激しい嘔吐やえずきに至る発作が夜間に集中します。マイコプラズマも気道上皮を広範囲に破壊するため、激しい頑固な咳と嘔吐感を伴います。