近年、国立文化財機構をはじめとする研究チームが推し進める高精細3Dレーザースキャン技術により、名品とされる古能面の「裏側(面裏)」の構造が次々と解明されている。
2026年に発表された最新の研究レポートによると、室町時代から江戸時代にかけての名工たちは、面の表側の造形だけでなく、演者の呼吸や声の響き方をコントロールするために、面の裏側の削り込みを段階ごとに微細に変えていたことが判明した。「生成」から「真蛇」に至るにつれ、演者の視界は極限まで狭められ、呼吸音が増幅される構造になっているという。面をかけること自体が、演者をトランス状態へと導き、物理的に「鬼に変身させる」ためのシステムとして設計されていたのだ。