万が一、胃がんと診断された場合、その進行度(病期)によってどのような治療が選択され、どれほどの生存率が期待できるのでしょうか。胃がんのステージは、がんの深達度(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)の組み合わせにより、I期(IA・IB)、II期(IIA・IIB)、III期(IIIA・IIIB・IIIC)、IV期の4段階に大別されます。
国立がん研究センターがん情報サービスの全国集計データおよび日本胃癌学会の治療ガイドラインを基に、最新の病期別実態を以下の表にまとめました。
データが示す通り、ステージIで発見された場合の5年生存率は9割を超え、完治が十分に狙える病気となっています。一方で、ステージIVにおける「5年生存率約6〜11%」という数字は依然として過酷な現実に映ります。かつては「ステージ4=余命数ヶ月」と宣告されるケースが一般的でした。
しかし、薬物療法の進歩により、臨床現場の風景は劇的に変わりつつあります。胃がん最新治療法の大きな柱となっているのが、個々の患者のがん遺伝子プロファイルに応じた「プレシジョン・メディシン(精密化医療)」の普及です。
HER2過剰発現に対する「トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)」、PD-L1発現症例に対する免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ」「ペムブロリズマブ」と抗がん剤の併用療法に加え、胃がん細胞に高発現するタンパク質を狙い撃ちにする標的治療薬「ゾルベツキシマブ(ビロイ)」の登場により、従来の化学療法では太刀打ちできなかった進行胃がん・遠隔転移症例においても、病勢の長期コントロールや劇的な腫瘍縮小が得られる症例が確実に増加しています。ステージIVであっても「治療選択肢がない」「何もできない」と諦める時代ではなくなっています。