漢字の成り立ちを遡ると、古代人が身体をどのように捉えていたかが鮮やかに見えてくる。漢字学の大家である白川静の古代文字研究によれば、「足」の甲骨文字・金文は、膝頭と足首より下の接地部を象ったものだ。自立して行動する人間の生命力の根源を表し、やがて「満ち足りる」「過不足がない」といった抽象的な意味へも派生していった。
一方の「脚」は、肉月(にくづき)に「却」を組み合わせた形声文字である。「却」には退く、引き締まるという意味が含まれており、体重を支えて屈伸する力強い下肢の肉体を指し示した。国語学者の金田一春彦がかつて指摘したように、日本語における身体語彙の多くは、具体的な視覚的イメージと触覚的実感が重なり合って発展してきた。「足」が地面を踏みしめる接地感覚であるのに対し、「脚」は立脚する構造物としての力感を宿している。