患者が最も不安を募らせるのが「手術中の痛み」です。インターネット上の掲示板やSNSでは「激痛で気を失いそうだった」という体験談と「全く痛くなかった」という意見が二極化しており、これが混乱を招く原因となっています。
痛みの有無を左右する最大の要因は、麻酔の種類です。現代の多くの産婦人科クリニックや総合病院では、子宮内膜掻爬術の痛みと静脈麻酔をセットで管理する方針が定着しています。点滴から鎮痛剤と鎮静剤(プロポフォールなど)を静脈内に投与すると、数十秒で心地よい眠りに落ちます。手術そのものは患者が完全に熟睡している間に進行するため、術中にメスや器具の痛みを感じることは原則としてありません。
取材した産婦人科専門医は次のように証言します。「外来の細胞診で強い痛みを感じた経験から、掻爬術を極度に恐れる患者様は少なくありません。しかし、細胞診が無麻酔で行われるのに対し、掻爬術は十分な静脈麻酔下で行われます。目が覚めた時にはすべて終了しているため、恐怖心を抱く必要はありません」。
術前処置(頸管拡張)と術後の鈍痛について
麻酔下の手術自体が無痛である一方、あらかじめ知っておくべき痛みのポイントが2点あります。
1つ目は、手術前に行われる「頸管拡張」です。子宮の入り口(子宮頸管)は通常固く閉じているため、器具を挿入できるようにラミナリアやダイラパンといった水分を吸収して膨らむ医療用スポンジ、あるいは浸透圧拡張材を前日や当日の朝に挿入することがあります。この処置の際に、重い生理痛のような強い圧迫痛や鈍痛を覚える方が一定数存在します。近年では痛みを緩和するため、事前に鎮痛剤を投与したり、拡張剤を使用せず薬物(プロスタグランジン製剤)で頸管を軟化させる手法を採用する施設も増えています。
2つ目は、麻酔から覚醒した後の「子宮収縮痛」です。内膜を処置された子宮は、元の状態に戻ろうとして生理痛に似た収縮を起こします。下腹部にズキズキとした鈍痛を感じることがありますが、術後に処方されるロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛消炎剤を服用すれば、日常生活に支障をきたさないレベルまで十分に抑えられます。