華やかなブティックの扉を開けても、お目当てのアルハンブラに出会えない――。SNSや口コミサイトで連日投稿されるこの嘆きは、決して大げさな表現ではありません。国内正規店におけるヴァンクリーフ買えない真相の根底には、偶発的な品不足ではなく、メゾン側が主導する極めて意図的な流通コントロールが存在します。
筆者が都内の直営店スタッフおよび業界関係者への取材を進めると、現在店頭に並ぶ定番アイテムのほとんどは「商談アポイントメント用」または「ディスプレイ専用」として割り振られており、フリーで入店した一般顧客がその場で購入できるフリー在庫は極めて稀であることが判明しました。多くの店舗で事前予約制が定着し、土日の入店枠は数週間先まで埋まる争奪戦が続いています。
さらに流通現場を逼迫させているのが、ヴァンクリーフオーダー待ち期間の長期化と、それに伴う受注制限です。かつては店頭に在庫がない場合、数ヶ月から半年程度の納期を見込んでスペシャルオーダー(客注)を入れることが可能でした。しかし、熟練職人の手作業による生産上限を遥かに超える注文が殺到した結果、主要なアルハンブラコレクションにおいて恒常的なオーダーストップ措置が取られています。現在では一部のハイジュエリーや例外的な枠を除き、「入荷連絡を待つことすら受け付けられない」状況が続いており、これが市場の飢餓感をさらに増幅させています。
これに拍車をかけたのが、為替要因による訪日外国人観光客(インバウンド)の爆買いです。欧米やアジア圏の正規店と比較して割安となった日本のブティックに海外富裕層が押し寄せ、入荷した先から即座に在庫が消えていくサイクルが定着しました。メゾン側も年間購入個数の制限や転売防止策を強化していますが、需要と供給の絶対的なアンバランスは解消されていません。