日光さる軍団などの飼育現場や野生観察において、ニホンザルは18種類以上もの豊かな表情を使い分けていることが確認されています。
例えば、歯をむき出しにして笑っているように見える表情(グリマス/恐れ顔)は、敵意がないことや服従を示すサインです。一方、口を丸く開けて相手を見つめるのは威嚇を意味します。群れの中で余計な争いを避け、安定した序列を維持するために、視覚的なコミュニケーションが極めて高度に発達しました。
さらに、日本の霊長類学の礎を築いた河合雅雄氏らのフィールドワークによって、野生のニホンザルは決まった巣を持たず、行動圏内にある複数の「泊まり場(安全な断崖や大木)」を季節や天候、食料事情に応じて計画的に巡回利用していることが判明しています。群れ全体を統率しながら数十平方キロメートルの地理情報を正確に把握し、リスクを回避しながら移動する空間認知能力の高さは、過酷な冬を乗り切るための重要な知性です。