神崎直が辿り着いた「終着点」は、原作漫画と実写映像版でそのアプローチと余韻が大きく異なります。どちらも「信頼が疑心暗鬼に勝利する」という根底のテーマは共有しつつも、事務局の正体や直自身の成長の描かれ方には明確なコントラストが存在します。
まず、実写映画『ザ・ファイナルステージ』における結末は、劇場版ならではの鮮やかなカタルシスに満ちています。最終決戦「エデンの園ゲーム」で直は裏切り者・仙道の手口に追い詰められながらも、秋山とともに全員が赤リンゴを揃える「真の協力関係」を粘り強く訴え続けました。結果として全プレイヤーの心を開かせ、莫大な賞金を全員で分配して負債を相殺。直は一円の富も得ない代わりに、誰一人脱落者を出さずに平穏な日常へと帰還しました。
一方、甲斐谷忍による原作漫画版(全19巻・最終第201話)の結末は、より構造的で冷徹な社会実験のリアリズムを帯びています。最終ゲーム「四ツ巴ラビリンス」を経て明かされたライアーゲーム事務局(LGT)の真の目的は、かつてアメリカの富豪たちが企てた「人間の利他性と利己心の臨界点を測るための思想実験」の再現であり、その様子をドキュメンタリー映画として富裕層に売買する巨大ビジネスでした。
原作の直は、単に秋山に庇護される存在から脱却し、自らの意思でゲームの欺瞞を暴き、他者を巻き込んで共闘する強靭な知性と精神力を獲得していきます。最終的に事務局の支配構造を機能不全に追い込み、ゲームを内側から崩壊させた直は、秋山と静かに別れを告げ、自分の足で現実社会へと歩み出しました。奇跡を祈るだけの少女から、現実の濁流の中で信頼を勝ち取る「実践者」へと脱皮を遂げた点こそ、原作版における神崎直の真の到達点でした。