道化師様魚鱗癬は、国が定める「指定難病160」に包括される先天性魚鱗癬の中でも、最も重篤な病型として知られています。発症頻度は約30万人に1人と極めて稀少であり、臨床現場の産科医や小児科医でも生涯で一度遭遇するかどうかという難病です。 生まれて間もない新生児の道化師様魚鱗癬は、厚さ数ミリにも及ぶ黄白色の硬い板状角質が全身を包み込み、まるで鎧をまとっているかのような外観を呈します。この分厚い角質が乾燥に伴って収縮し、格子状の深い亀裂を生じさせます。皮膚の過度な牽引によって、まぶたが裏返る「眼瞼外反(がんけんがいはん)」や、唇が反転する「口唇外反(こうしんがいはん)」、耳介の癒着や四肢の屈曲拘縮が引き起こされるのが特徴的な道化師様魚鱗癬の症状です。 この劇的な皮膚変化を引き起こす道化師様魚鱗癬の原因は、近年の分子遺伝学の発展によって解明されました。皮膚の最も外側にある表皮細胞内で脂質を運ぶトランスポーターであるABCA12遺伝子変異が特定されています。正常な皮膚では、細胞内に蓄えられた脂質(主にグルコシルセラミド)が細胞外へと放出されることで強固なバリア構造が作られます。しかし、この遺伝子に異常があると脂質が正常に分泌されず、皮膚の水分保持機能とバリア機能が根底から崩壊し、代償作用として異常な角化が猛烈なスピードで進行してしまうのです。 遺伝形式は「常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)」をとります。両親ともに症状のない保因者(ヘテロ接合体)であった場合、子どもへの道化師様魚鱗癬の遺伝確率は妊娠1回あたり25%(4分の1)となります。性別に関係なく発症し、両親のどちらか一方のみに原因があるわけでも、妊娠中の生活環境や食生活が引き起こすものでもありません。同じく指定難病に属する先天性魚鱗癬様紅皮症などと並び、遺伝子配列の偶発的な組み合わせによって生じる純粋な先天性疾患です。
道化師様魚鱗癬の赤ちゃんが辿る現在と生存率|原因と家族の軌跡
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