この空前絶後の事件の深層に迫り、現代犯罪史に刻んだノンフィクション作家が小野一光氏である。同氏の著書『モンスター 角田美代子と尼崎連続変死事件』は、彼女の生い立ちから凄惨な支配の手口、そして警察の捜査資料や関係者の証言を丹念に手繰り寄せた圧倒的なルポルタージュだ。
小野氏の取材によって浮き彫りになったのは、美代子という女の絶対的な支配欲と、人間心理の隙間を過敏に察知する恐るべき感性だった。未公開の捜査資料や供述調書が語る真実――それは、単なる凶暴な犯罪者という像を超え、他者の家族関係に寄生して自らの王国を築き上げた異形の大罪人の姿だった。公の法廷に立つことのなかった彼女の裏の顔や動機は、こうした粘り強い取材報道によって初めて社会に開示されることとなった。