変なおじさんコントの完成度を支えていたのは、志村さんの怪演を受け止める歴代共演者たちの絶妙なリアクション技術でした。
黎明期のパートナーとしてコント史に名を刻むいしのようこさんや松本典子さんは、単なる「驚き役」にとどまらず、志村さんのアドリブに対して本気の恐怖と呆れを絶妙な温度感で表現していました。関係者の証言によると、志村さんはリハーサルで段取りを細部まで固める一方で、本番では共演者にすら予告していない突発的な動きを仕掛けることが常でした。いしのようこさんが見せる「半分本気で引き、半分笑いを堪えている生々しい表情」こそが、視聴者の没入感を高める最大のスパイスとなっていたのです。
追って登場する「見回り役」として長年欠かせない存在だったのが桑野信義さんや田代まさしさん、そしてゲスト出演した渡辺徹さんたちでした。「おじさん、またあんたか!」と制止に入りながらも、最終的には志村さんのペースに巻き込まれ、全員で「だっふんだ」のポーズを取らざるを得なくなる——この集団同調のプロセスが、お茶の間に心地よい一体感を提供していました。
後年の『志村けんのバカ殿様』や特番において、長きにわたりバディを務めた優香さんは、志村さんの笑いについて「志村さんは誰よりも相手のリアクションを観察し、こちらの息遣いに合わせてボケの間を変えていた」と述懐しています。変なおじさんは志村さんの一人芝居に見えて、実は共演者とのミリ秒単位の掛け合いによって成立していた高度なアンサンブル劇だったのです。