音楽史における転換点を振り返る上で、西野カナ Dear 発売日である2009年12月2日の音楽情勢は見逃せません。本作は通算8枚目のシングル『Dear... / MAYBE』としてリリースされ、西野カナにとって初となる西野カナ Dear MAYBE 両A面仕様で世に放たれました。
当時、着うたフル市場で爆発的な人気を博していた彼女の勢いを決定づけたのが、西野カナ Dear ドコモ CM曲(NTTドコモ「ガンバレ受験生 '09-'10」公式タイアップソング、および携帯端末「SH-03B」のCMソング)への起用でした。テレビから連日流れる切なくも透明感のあるハイトーンボイスは、受験生や遠距離恋愛中のカップルだけでなく、全国のお茶の間に強烈なインパクトを与えました。
この名曲の裏側にある西野カナ Dear 制作秘話として有名なのが、彼女独特の作詞メソッドです。西野カナは当時、自身の友人たちに徹底的なアンケートや恋愛相談を実施し、ノートに集めたリアルな単語やシチュエーションをプロット化して歌詞を構築していました。本人が当時の音楽特番で語ったところによると、「自分自身の体験だけでなく、実際に遠距離恋愛で悩んでいた親友の涙や、夜中に交わした電話の空気感をそのまま封じ込めた」といいます。徹底した客観的リサーチと、生身の当事者性が融合したからこそ、机上の空論ではない圧倒的な説得力が生まれたのです。
その後、2010年6月23日にリリースされた2ndアルバムにおいて、西野カナ Dear to LOVE 収録曲として堂々の配置がなされ、同アルバムはオリコン週間ランキング1位を獲得しミリオンセラーを達成。名実ともに平成J-POPを代表する金字塔となりました。