首都圏に広大なキャンパスを持つ大学であっても、卒業式となるとあえて日本武道館を会場に選ぶケースが目立ちます。これには、単なる知名度やイメージ戦略だけではない、大学経営と運営実務上の明確な構造的理由が存在します。
第一の理由は、最大約14,000人を収容可能な圧倒的キャパシティと都心の交通利便性です。明治大学や日本大学、法政大学といった在学生数万人規模の総合大学では、単一のキャンパス講堂に全学部の卒業生を収容することが物理的に不可能です。日本武道館であれば、すり鉢状のスタンド席とアリーナ席を効率的に配置でき、午前・午後の「2部制」あるいは「3部制」に分けることで、1日に数万人規模の学生と関係者を円滑に捌くことができます。
第二に、学生と保護者の双方に与える「人生の節目」としての象徴的価値が挙げられます。1964年の東京オリンピックのために建設され、国内外のトップアーティストが歴史を刻んできた日本武道館の舞台に立つことは、学業を修めた学生にとって特別な達成感をもたらします。大学関係者への取材でも「地方から上京させた保護者にとっても、武道館での式典は子育ての集大成として非常に満足度が高い」という声が多く聞かれます。