江戸の流しタクシー「つじかご」の正体!驚きの運賃相場と雲助の実態

江戸の流しタクシー「つじかご」の正体!驚きの運賃相場と雲助の実態

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当時の物価と経済史資料から、辻駕籠の料金相場を詳細に割り出してみると、意外な経済的実態が浮き彫りになります。江戸後期における辻駕籠の基本料金は、おおむね1里(約3.9km)の移動につき「100文から200文」が相場とされていました。当時の二八蕎麦が1杯16文、職人の日当が400〜500文程度であったことを考慮すると、片道乗車だけで日当の半分近くが消える計算になります。

歴史経済学における購買力平価基準(米価換算および庶民の消費支出基準)を用いて辻駕籠の現代換算価格を試算すると、幕末前の1文はおよそ25円〜35円の価値に相当します。これを現在の価格に引き直すと以下のようになります。

  • 通常時の近距離移動(約4km・日本橋〜浅草間):100文〜200文 = 約3,000円〜7,000円
  • 深夜・悪天候時の長距離移動(日本橋〜吉原間など):300文〜400文 = 約10,000円〜14,000円

この金額設定からも明らかなように、長屋に暮らす一般的な長屋庶民が「少し歩くのが疲れたから」と気軽に手を上げて乗るような日常の足ではありませんでした。主な利用客は、時間に追われる豪商や両替商、急病人を運ぶ家族、懐に余裕のある武士、そして吉原遊郭へ見栄を張って乗り付ける通人たちでした。

一方、移動効率の観点から辻駕籠のスピードと所要時間を検証すると、健脚の駕籠かき2名が担ぐ巡航速度は時速6〜8km程度でした。通常の徒歩移動が時速4km前後ですから、約1.5倍から2倍の速さで移動できた計算になります。例えば日本橋から吉原までの約8kmの距離であれば、徒歩で2時間以上かかるところを、辻駕籠なら約1時間強で駆け抜けました。「時間を金で買う」という近代的なタイム・イズ・マネーの思想が、この時代すでに確立されていたことが分かります。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。