取材を進めると、家庭を巡るトラブルは失踪劇の以前から行政機関にも把握されていた事実が判明した。地元の児童相談所に対し、男児の生活状況や夜間の外出を巡って近隣住民や学校関係者から複数回の相談・通告が寄せられていたのである。
しかし、行政の介入は決定打を欠いたまま推移していた。保護者・親族へのヒアリングでは、「円満な家庭を築こうと努力していた」「男児が新しい母親に懐かず、孤立感を深めていた」と、双方の言い分が真っ向から対立している。血縁と新たな婚姻関係の間で揺れ動く小さな命を、周囲の大人がどのように見つめていたのか。証言の齟齬を埋める作業が、今も慎重に進められている。