今回の襲撃を引き起こしたのは、爬虫類界で最大級の体躯と凶暴性を誇るイリエワニとみられている。オーストラリア北部や東南アジアに広く生息するこの捕食者は、体長5メートル、体重1トンを超える個体も珍しくない。彼らの最大の武器は、獲物をくわえたまま超高速で体を回転させる「デスロール(死の回転)」だ。
この猛烈な回転運動は獲物の四肢を容易に引きちぎり、瞬時に方向感覚を奪って溺死へと追い込む。現地で対応にあたった外傷救急医療の専門医は、傷口の凄惨さを重い口調で明かした。「ワニの咬合力は1.5トンを超え、骨ごと肉を粉砕する。仮に救助が数秒早かったとしても、壊滅的な多発外傷と細菌汚染による敗血症リスクが高く、生還の確率は極めて低かった」と分析する。