実体の定まらなかった謎の存在を決定づけたのが、19世紀の文学者ルイス・キャロルである。名作『鏡の国のアリス』の中で、キャロルは彼を言葉の定義に執着する偏屈で尊大な「卵の紳士」として登場させた。ジョン・テニエルが描いた挿絵の強烈なインパクトも手伝い、ここで初めて「落下する謎の物体=卵の怪物」という図式が世界中の共通認識として固定化されることになる。
言葉の意味を自分の都合の良いように支配しようとするキャロル版の造形は、知的な傲慢さと崩壊の危うさを同居させた見事な人間風刺だった。完璧に見える殻の中に閉じこもり、他者を見下しながらも、突風ひとつで修復不能な破滅を迎える。この皮肉なキャラクター性は、後のクリエイターたちにとって格好の創作モチーフとなっていく。