提供されるメニューに派手な演出はない。だが、ひとくち口に運べば、その丁寧な仕事ぶりに誰もがハッと息をのむ。
定番人気メニュー「旬野菜と塩豚のポトフ」は、澄み切ったスープの深みが印象的だ。隠し味には、エレーヌさんが京都の老舗で学んだという昆布だしの技術がひそかに活かされている。フランスの伝統的な煮込み文化と和の旨味が静かに響き合い、じんわりと身体に染み渡る。添えられた香ばしいカンパーニュをスープに浸して口へ運ぶたび、客たちの顔に自然と笑みがこぼれていく。
「特別な高級食材を使っているわけではありません。大事なのは、素材の声を聴くことと、時間を惜しまないことだけ」とエレーヌさんは語る。