ここで当然の疑問が湧く。「では、マグロは一生眠らないのだろうか?」という問いだ。近年のバイオテレメトリー技術(小型超音波標識による生態追跡)の進展により、2026年現在の海洋生物学はその意外なメカニズムを特定している。
マグロは睡眠中も泳ぎを止めない。彼らは脳の左右を交互に休ませる「半球睡眠」を行っていると考えられており、意識のレベルを最小限まで下げた「省エネ巡航モード」へと移行する。夜間、マグロは深海に向かって緩やかな傾斜を描きながら滑空し、最小限の尾ヒレの動きで水流を鰓に通しながら浅い眠りにつく。止まって休むのではなく、動きながら休む術を身につけたのだ。