志摩マリンランドの閉館を、単なる地方施設の経営難として片付けることはできない。その背景には、世界規模で加速した生体展示に対する批判の高まりがある。決定的な転換点となったのは、映画監督ガブリエラ・カウパースウェイトが手がけ、Netflixなどを通じて世界中に衝撃を与えたドキュメンタリー映画『ブラックフィッシュ』だった。海洋哺乳類の飼育環境やストレスを暴いた同作は、欧米を中心に水族館・海洋テーマパークのビジネスモデルそのものを根底から揺さぶった。
この潮流は、瞬く間に環境ジャーナリズムの主旋律となり、大型海洋生物を囲い込んで見世物にする興行スタイルへ厳しい視線が注がれるようになった。かつては家族連れに夢を与える教育施設と称賛された水族館が、今やアニマルウェルフェア(動物福祉)の基準をどこまで満たしているかを問われる時代。昭和のレジャーブーム期に建てられた施設構造では、現代の国際的な倫理基準に追いつくことが構造的に不可能となっていたのだ。