本作が『妖怪ウォッチ』という巨大IPにおいて極めて重要な特異点と位置づけられる最大の理由は、現代のエンマ大王の誕生秘話が完全に明かされた点にあります。
作中で玉座を狙った紫炎は、先代閻魔大王の実子でありながら、心の闇に囚われて魔道に堕ちた悲劇の存在でした。先代閻魔大王は、血筋や権力への執着ではなく、「人間を信じ、慈しむ気高い魂」こそが次代の王にふさわしいと見定めていました。激闘の果てに命を散らしたイツキの清らかな魂は、妖魔界の審判を経て、新たな生命として生まれ変わる祝福を受けます。
劇中のエピローグにおいて、先代閻魔大王の膝元で抱かれる赤子こそが、後に妖魔界を統べる若きカリスマ「エンマ大王」その人です。イツキの声を担当した声優の木村良平氏が、テレビシリーズ等でエンマ大王の声を一貫して務めているキャスティングの意図は、このラストシーンによって完璧な伏線回収として結実しました。
「なぜ現代のエンマ大王は、あれほどまでに人間界に深い愛着を持ち、人間と妖怪の共生を信じ続けているのか?」という長年の謎に対し、本作は「彼自身の前世が、命を賭して人間と妖怪を愛した少年イツキだったからである」という明快かつ情緒あふれる回答を提示したのです。