ファンの間で長年熱狂的な議論の的となっているのが、「なぜダメージ反射の能力は物語中盤以降まったく使われなくなったのか?」という疑問です。涙目のルカがジョルノの胸にいたカエルをスコップで殴りつけて頭部を陥没させ、広瀬康一のエコーズACT3が木を攻撃して自重で沈み込んだ描写を最後に、この絶対防御は姿を消しました。
考察界隈やネット上のコミュニティでは「荒木先生が設定を忘れたのではないか(いわゆる『ライブ感』)」と囁かれるケースが目立ちます。しかし、ストーリーテリングの構造を専門的に分析すると、より明確な理由が浮き彫りになります。
最大の要因は、「ダメージ反射が存在し続けるとサスペンスと頭脳戦が破綻する」というバトル演出上のジレンマです。『ジョジョ第5部 黄金の風』の醍醐味は、暗殺者チームをはじめとする過酷な敵スタンド使いとの「命を削る極限の読み合い」にあります。もしジョルノが生み出したカエルやツタを体に巻き付けるだけで敵の攻撃をノーリスクで反射できるなら、プロシュートの「ザ・グレイトフル・デッド」やチョコラータの「グリーン・ディ」のような無差別殺戮攻撃すらジョルノ自身は無力化できてしまいます。
さらに、中盤以降のジョルノは「チームの主治医(ヒーラー)」としての役割を確立しました。負傷した仲間を救う治癒能力と、敵の攻撃を反射する無敵バリアを同時に持たせてしまうと、主人公一人で攻守・補助がすべて完結してしまい、ブチャラティチームの共闘構造が成立しなくなります。「ダメージ反射」のフェードアウトは、忘却というよりもスリリングなチームバトルを成立させるための必然的な引き算だったと判断できます。