シーズンを通して過酷な登板をこなすプロ野球選手にとって、日々の食事はまさに燃料であり、怪我を防ぐ防壁そのものだ。成嶋さんは結婚後、専門知識を深めるために「アスリートフードマイスター」の資格を取得。夫の身体作りに必要な栄養素を徹底的に分析し、日々の献立に落とし込んでいった。
広島時代、前田投手が先発ローテーションを守り抜き、数々のタイトルを獲得できた背景には、計算され尽くした家庭の食卓があった。高タンパク・低脂質をベースにしながらも、味気ない制限食にするのではなく、夫のモチベーションを高める彩り豊かなメニューを考案。疲労回復を促すビタミン群の配合や、登板日に合わせたエネルギー補給のタイミングに至るまで、細部への配慮はプロフェッショナルの仕事そのものだった。
この食への徹底したアプローチは、後に海を渡った米国での生活でさらに真価を発揮することになる。慣れない食材や外食中心になりがちな過酷なロード遠征の中でも、日本と変わらない安心できる味を提供し続けたことが、前田投手の肉体を常に最前線に留める力となった。