物語の軸をなすのは、主人公である10歳の少女・荻野千尋とカオナシとの決定的な対比である。千尋は過酷な労働環境に置かれながらも、自分の本名と「大切な人を助ける」という意志を失わずに成長していく。彼女はどんなに危険な目にあっても、自分自身を見失わない。
一方でカオナシは、金を出しても千尋の心が動かないことに動揺し、パニックを起こす。「自分には何も渡せるものがない」と気づいた瞬間の逆上は、自己の不在を証明するものだ。千尋が「自分」を取り戻す物語であるならば、カオナシは「自分」を持たない者の破滅と救済の軌跡と言える。