儀式当日に最も混乱しやすいのが、お食い初めの食べる順番と作法です。赤ちゃんはまだ固形物を口にできないため、箸を料理に軽く触れさせたあと、赤ちゃんの唇にそっと近づけて「食べさせる真似」をします。この一連の所作を丁寧に繰り返すのが古来のルールです。
基本となるサイクルは、「ご飯(赤飯)→汁物→ご飯→魚(主菜)→ご飯→汁物」を1セットとし、これを合計3回繰り返します。この反復には「主食と副食を交互に口へ運び、豊かな実りを身体に取り込む」という農耕儀礼に由来する祈りが込められています。
3往復の儀礼を終えた直後、クライマックスとして執り行われるのが「歯固めの儀式」です。この一連のシークエンスを事前に頭へ叩き込んでおくことで、当日の手戻りやぎこちなさを防ぐことができます。
膳を彩るお食い初めの祝い膳メニューは、日本伝統の一汁三菜を基本骨格として構成されます。
- 赤飯:小豆の赤い色に邪気払いの力があるとされ、魔除けと無病息災を象徴します。
- お吸い物:蛤のお吸い物の意味は、対となる貝殻でなければ絶対に合わさらないことから、「将来、良き伴侶と巡り合い、生涯添い遂げられるように」という夫婦円満・良縁祈願の象徴です。
- 祝い鯛:「めでたい」の語呂合わせに加え、恵比寿様が抱える魚としても知られる尾頭付きの鯛。赤色が慶事を寿ぎ、頭から尾まで揃っていることで「初志貫徹」「首尾一貫」を表します。
- 煮物:亀甲に見立てた椎茸、末広がりの筍、子孫繁栄を願う里芋など、縁起の良い根菜を炊き合わせます。
- 香の物・酢の物:旬の野菜の酢漬けやタコの酢の物など。「多幸」に通じるタコや、紅白なますで清らかさを表します。
配膳にあたっては、お食い初めの食器の並べ方にも明確なしきたりが存在します。赤ちゃんから見て手前左側に「赤飯」、手前右側に「お吸い物」を配置し、奥の左側に「煮物」、奥の右側に「香の物・歯固めの石」、そして中央または別皿に「祝い鯛」を据えるのが格式ある本膳の配置です。祝い鯛の食べさせ方としては、尾頭付きのふっくらとした身の箸先をわずかに赤ちゃんの唇にチョンと当てる仕草を行い、喉に小骨が飛ばないよう細心の注意を払って見守ります。