ソーシャルメディアやネットの掲示板(知恵袋や5ちゃんねる等)を調査すると、歯の黒い線に悩むユーザーによる悲痛な告白や、誤ったセルフケアによる被害報告が数多く見受けられます。
「奥歯の溝にできた黒い線が気になり、爪楊枝や市販の金属製スケーラーで力任せに引っ掻いていたら、歯が欠けて猛烈にしみるようになった」「ホワイトニング用の高研磨剤入り歯磨き粉で毎日ゴシゴシ磨き続けた結果、エナメル質が薄くなって黄色い象牙質が透け、黒い線も消えなかった」といった実例は氷山の一角です。
都内の歯科クリニックに勤務するベテラン歯科衛生士は、取材に対して次のように現場の実態を明かします。
「患者様の中には、『市販の歯石取りスケーラーで黒い線を取ろうとした』とおっしゃる方が少なからずいらっしゃいます。しかし、先のとがった硬い金属で無理に削ると、エナメル質に無数の微細な傷(マイクロクラック)をつけることになります。その傷に汚れや細菌がさらに入り込み、結果として以前よりも黒ずみが濃くなり、虫歯のリスクを自ら跳ね上げてしまうのです。また、歯肉を傷つけて歯周病を悪化させるケースも頻発しています」
さらに、近年増加しているのが、就寝中の無意識な食いしばりや歯ぎしりによって生じる歯のひび割れマイクロクラックに色素が入り込む事例です。成人の咬合力は自身の体重に匹敵する50〜70kg、就寝時には無意識下でそれ以上の力が特定の歯にかかります。この負荷によって生じたガラスのヒビのような亀裂にステインが浸透すると、細い黒い線として視認されるようになります。これを単なる汚れと勘違いして放置した結果、ある日突然亀裂が歯根まで到達し、歯が真っ二つに割れて抜歯宣告を受ける患者が後を絶ちません。