「骨が刺さったけれど、翌朝起きたら痛くなくなっていたから放置した」という体験談をインターネット上で見かけることがあります。人間の咽頭粘膜には異物を排除しようとする自浄作用や新陳代謝の働きが備わっており、髪の毛のように極めて細い小骨であれば、唾液の分泌や食事の通過に伴って自然に抜け落ちるケースがあるのは事実です。
しかし、「痛みが引いたから安全」と判断するのは極めて危険な思い込みです。痛みが消失した理由には、大きく分けて2つの盲点が存在します。
1つ目は、「骨自体はすでに脱落しているが、粘膜についた引っかき傷だけが残り、違和感だけが持続している」パターンです。この場合は時間の経過とともに自然治癒しますが、本人は「まだ刺さっているのではないか」と不安を募らせ、過剰に喉をいじって傷口を広げてしまう悪循環に陥りがちです。
2つ目は遥かに深刻なケースで、「骨が粘膜の深層組織に完全に潜り込み、表層の知覚神経から外れたため一時的に痛みが引いている」状態です。痛みを感じない水面下で、骨に付着していた口腔内常在菌や細菌が組織内部で繁殖を始めます。数日から1週間ほど経過した後に、突然の高熱、喉全体の激しい腫れ、口を開けられないほどの激痛(扁桃周囲膿瘍や咽頭後隙膿瘍)として爆発するリスクを秘めています。