逆流性食道炎を患う人々が訴える息の異変には、主に「酸っぱいツンとした刺激臭」と「下水やドブを想起させる重度の腐敗臭」という2つの顕著なパターンが存在します。これらは単なる口内の磨き残しによる臭気とは発生プロセスが根本から異なっています。
酸っぱい匂気の主因となるのは、胃液に含まれる強力な塩酸(胃酸)そのものです。通常、食道と胃の境界にある下部食道括約筋(LES)が強固な弁として働き、内容物の逆流を防いでいます。しかし、加齢や腹圧の上昇、ストレスによってこの筋力が緩むと、pH1〜2という強酸性の液体が食道を駆け上がり、喉元や口腔へ到達します。この現象が「呑酸(どんさん)」です。口の中に広がる酸味とともに、鼻にツンと抜ける酸性の刺激臭が呼気へ混入し、周囲に「柑橘が腐敗したような酸っぱい臭い」として感知されます。
一方で、より深刻な悩みに発展しやすいのが「ドブ臭い」「生ゴミのような」腐敗臭です。胃の蠕動運動が低下して消化不良が起きると、胃内に長時間滞留したタンパク質や脂質が異常発酵を始めます。その結果、硫化水素やメチルメルカプタンといった揮発性硫黄化合物(VSC)が大量発生します。胃の出口が詰まり気味の状態で逆流が起きると、この発酵ガスがゲップとともに噴出し、口腔内にへばりつくことで、あたかも下水のような強烈な悪臭を周囲に放ってしまうのです。