SNSや医療Q&Aプラットフォームの投稿を分析すると、多くの患者が初期段階で受診を遅らせてしまっている実態が浮き彫りになります。「胸元に赤い糸のようなブツブツができたが、痛くもかゆくもないので放置していた」「新しい美容液の肌荒れだと思い、市販の抗炎症軟膏を塗り続けていた」といった告白が後を絶ちません。
ある肝臓専門医が担当した50代男性の症例では、健康診断の血液検査において「ASTやALTの数値が基準値上限をわずかに超えている程度」だったため安心しきっていたところ、首筋と胸元に3箇所のクモ状血管腫が出現。気になって近隣の消化器内科を受診したところ、腹部エコーと確定診断の生検で、すでに代償期肝硬変へと移行していた事実が判明したという報告があります。
肝臓は痛覚神経を持たないため、組織の破壊が深刻なレベルに達するまで強い自覚症状を出しません。倦怠感や黄疸、腹水といった誰もが知る典型症状が現れた時点では、非代償期と呼ばれる危険なステージに入っていることが大半です。「胸元に数ミリの血管の赤みができただけ」という皮膚の微小な変異こそが、不可逆的な肝不全に陥る前に身体が発信してくれた数少ないSOSシグナルである現実を軽視してはなりません。