氷嚢(ひょうのう)とは、ゴムや防水加工された布地で作られた袋の中に氷と少量の水を入れ、発熱時やケガをした患部に当てて冷却するための医療・衛生用品です。かつては天然ゴム製の飴色の袋に金属口金がついたレトロな形状が主流でしたが、現在はポリエステル素材の内側にTPU(熱可塑性ポリウレタン)コーティングを施した「アイスバッグ」と呼ばれるタイプが市場の大半を占めています。
「氷嚢」と「アイスバッグ」は呼び名が異なるだけで構造的・機能的な違いは基本的にありません。海外規格やスポーツ用品市場ではアイスバッグ、国内の医療現場やドラッグストアでは氷嚢と表記される傾向があります。
多くの人が疑問に抱くのが「冷凍庫にある保冷剤やジェルパックで代用できないのか?」という点です。結論から言えば、患部の急速冷却や長時間の安全なアイシングにおいて、氷嚢は保冷剤を大きく凌駕します。保冷剤はマイナス10℃以下まで冷え固まる性質があり、タオルを巻かずに直接肌へ当てるとわずか数分で凍傷(凍結融解による組織損傷)を引き起こすリスクがあります。一方、水を入れた氷嚢は常に「氷水が共存する0℃」を維持し続けるため、毛細血管を過剰に痛めず、安全かつ深部まで冷気を届けることができるのです。