中学生の税の作文で上位入賞を果たす作品には、審査員をうならせる明確な理由があります。「税金を褒め称えれば評価される」と思い込んでいる人も少なくありませんが、現場の下馬評は全く異なります。毎年全国から集まる約40万〜50万編もの応募作に目を通す審査員が最も倦厭するのは、インターネットやパンフレットの解説を切り貼りしたような「きれいごとの作文」です。
過去に内閣総理大臣賞や国税庁長官賞過去作品に選ばれた優秀作を紐解くと、そこには中学生税の作文入賞作品の共通点がはっきりと浮かび上がってきます。最大のポイントは、「個人的なリアルな体験(事件や違和感)」から始まり、「税に対する無知・誤解の自覚」、そして「社会を支える当事者としての自覚」へと視点が鮮やかに変化している点です。
全国納税貯蓄組合連合会コンクールなどの選考関係者や現場教員の証言によると、選考を通過する作文の多くは冒頭で以下のような具体的なエピソードを提示しています。
- 部活動の練習中に骨折し、救急搬送された際の救急隊員の対応と、窓口で支払った医療費の少なさに驚いた体験
- 新学期に配られた教科書の裏表紙にある「無償給与」の四文字を見つけ、誰がその費用を出しているのか疑問に持った瞬間
- 祖父母の介護や通院に同行し、手厚い福祉サービスの裏側に税金による大きな支えがあると知った家庭内の対話
- 大雨や台風で崩落した近所の道路が、短期間で頑丈に復旧した現場を目撃したときの安心感
入賞作は単に「税金は大切だと思いました」という月並みな感想で終わることはありません。公的資料から「生徒1人にかけられている公教育費(年間約100万円以上)」や「救急車の出動1回にかかるコスト(約4万5,000円)」といった客観的な数字を自力で調べ、それを自分の生活実感と照らし合わせています。「受益者(恩恵を受ける側)」から「将来の納税者(社会を支える側)」へと精神的な階段を一段上る、その成長の過程こそが審査員の心を強く惹きつけるのです。