人差し指(第2指=2D)と薬指(第4指=4D)の相対的な長さの違いは、学術的に「2D:4D比(指比)」と呼ばれます。測定方法は、手のひら側の指の付け根にある一番下のシワから指先までの長さを測り、人差し指の長さを薬指の長さで割ることで算出されます。この数値が「1未満」であれば薬指のほうが長く、「1以上」であれば人差し指のほうが長いことを意味します。
なぜ手足の先端にある指の骨の比率が、人間の認知能力や性格と結びつけられるのでしょうか。その発端は、英リバプール大学の進化心理学者ジョン・マニング(John Manning)教授が1998年に発表した画期的な研究にあります。マニング教授らのチームは、妊娠初期(主に妊娠第1三半期)の子宮内において、胎児が晒される性ホルモンの濃度バランスが指の骨格形成に直接作用することを突き止めました。
生体メカニズムは非常に精緻です。四肢の骨形成を司る「Hoxa遺伝子」および「Hoxd遺伝子」は、実は生殖器官の発達を制御する遺伝子と共通しています。胎盤を通じて供給される男性ホルモン「テストステロン」の濃度が高い環境では薬指の成長が強く刺激され、逆に女性ホルモン「エストロゲン」の濃度が高い環境では人差し指の成長が促進されます。つまり、指の比率は「胎児期にどれだけ男性ホルモンのシャワーを浴びたか」を物語る恒久的な生体化石のような役割を果たしているのです。
一般的に男性は薬指が人差し指より長く(低2D:4D比)、女性は人差し指と薬指がほぼ同じか人差し指がやや長い(高2D:4D比)傾向を示します。指の骨端線が閉じる思春期以降もこの比率は基本的に生涯変化しないため、出生前のホルモン環境を非侵襲的に推定できる貴重なバイオマーカーとして医学界から熱い視線が注がれてきました。