「昨日まで何もなかった乾いた砂利敷きに、一晩の雨で大量発生した」と感じる人が大半ですが、実はイシクラゲがその場で突如生まれたわけではありません。雨が降る前から、彼らはそこに確かに存在し続けていたのです。
「死んでいるように眠る」クリプトビオシスの神秘
晴天が続くと、イシクラゲは急速に水分を失って縮小し、黒くカサカサに乾いた紙くずや海苔の燃えカスのようになって地面に張り付きます。この状態を生物学用語でクリプトビオシス(無代謝休眠状態)と呼びます。細胞内の生命活動を極限まで停止させ、放射線や極度の紫外線、摂氏マイナス数十度の極寒から熱帯の酷暑にまで耐え抜く無敵の防御モードです。
国内外の微生物研究機関の保管記録や実験データでは、乾燥状態で標本室に30年以上保管されていたイシクラゲに水をかけたところ、わずか数時間で呼吸と光合成を再開し、再びブヨブヨの群体へと復元した例が多数報告されています。つまり、乾燥している間は目に見えないだけで、砂利の隙間や土の表面で静かに雨の到来を待ち構えています。
過酷な環境を好む3大発生原因
植物が育ちにくい不毛な環境でイシクラゲが繁殖するのは、彼らが光合成を行うだけでなく、空気中の窒素を栄養分に変える窒素固定能力を併せ持っているためです。肥料分のない痩せ地でも自力で増殖できるため、以下の条件下で爆発的に増え広がります。
1つ目は「水はけが悪く湿気が滞留しやすい場所」、2つ目は「踏み固められて土壌の通気性が低下した場所」、そして3つ目が「コンクリートやブロックの目地、砂利敷きなどのアルカリ性寄りの環境」です。特に、土壌改良のために散布した消石灰やセメントのアク(水酸化カルシウム)が染み出している箇所は、酸性を好む雑草が衰退する一方で、弱アルカリ性を好むイシクラゲにとっては天国のような独壇場となります。