抗がん剤治療におけるウィッグの準備において、最も多い失敗が「髪が抜け落ちてから慌てて買いに行く」というケースです。日本アピアランスケア学会等の臨床データによると、抗がん剤の副作用による脱毛は初回投与後およそ10日から14日前後で始まり、2〜3週間で急速にピークを迎えるという経緯を辿ります。この時期は薬の副作用による倦怠感や吐き気、発熱などが重なりやすく、じっくり試着して製品を選ぶ体力的・精神的余裕が失われがちです。
ウィッグの準備を「初回投与前、あるいは投与直後の自髪がある時期」に行うべき理由は明確に3点存在します。
第1に、元のヘアスタイルや髪色、毛流をプロのスタイリストが正確に把握できる点です。自髪の長さや分け目の位置、普段の雰囲気が残っている段階で採寸・試着を行うことで、周囲から見ても違和感のない「バレない仕上がり」へと調整しやすくなります。
第2に、頭周囲のサイズ変化を見越したフィッティングが可能になる点です。豊かな毛量がある状態から完全に脱毛すると、頭囲は約1cm〜1.5cmほど小さくなります。アジャスター付きの医療用ベースキャップや、サイズ調整機能(アジャスターフックや縮小縫製サービス)を備えた医療用ウィッグであれば、脱毛期のサイズダウンと、その後の発毛期における頭囲の増大の両方にスムーズに適応できます。
第3に、脱毛開始時の心理的ショックを大幅に和らげられる点です。手元にウィッグとケア用品がすでに揃っているという事実は、患者にとって「いつでも外見を保護できる」という大きな心理的セーフティネットとして機能します。