晩秋から冬(11月〜2月頃)の観察において、「人間にとって有毒なら、なぜヒヨドリやツグミは平気で南天の実を啄んでいるのか」という疑問が生じます。この謎を解く鍵は、果実の毒性局在と消化器官の構造差にあります。
南天の実は、外側の薄い果肉部分には毒性がほとんどなく、発芽能力を宿した「硬い種子」の中に高濃度のアルカロイドを凝縮させています。野鳥たちは実を歯で噛み砕くことなく丸呑みし、胃の中で果肉の糖分のみを素早く消化吸収したあと、種子を傷つけずに糞とともに体外へ排出します。つまり、植物側は「鳥に種を遠くへ運ばせる(種子散布)」ために果肉を用意し、種子そのものを守るために毒を備えているのです。
一方、咀嚼(そしゃく)する哺乳類にとって、このメカニズムは致命的な罠となります。特に家庭内で注意すべきは犬や猫による誤飲・咀嚼事故です。
日本国内の小動物臨床現場からの報告でも、冬場に「飾ってあった南天の実を愛犬が噛み砕いて遊んでいた」「愛猫が吐き戻し、中から赤く潰れた実が出てきた」といった緊急受診が毎年後を絶ちません。体重あたりの毒素感受性は小型犬や猫ほど顕著に高くなるため、室内飼育環境では配置に最大限の注意が必要です。