昭和から平成にかけて定着していた「犬の1年は人間の7年(7倍説)」は、当時の日本人の平均寿命(約70歳)と犬の平均寿命(約10歳)を単純に割り算しただけの粗い概算に過ぎませんでした。この短絡的な定説に決定的な終止符を打ったのが、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部の研究チームが主導したエピジェネティクス(DNAメチル化解析)研究です。
研究チームは、加齢に伴ってDNA配列に化学的な目印が付着していく「エピジェネティック・クロック(分子生物学的な老化時計)」に着目。ラブラドール・レトリーバーをはじめとする数百頭の犬と人間のDNAを精密に比較対照した結果、犬の加齢プロセスは一定速度の直線ではなく、対数関数的なカーブを描いていることを突き止めました。
発表された犬の年齢 計算式 最新モデルは、以下の計算式によって表現されます。
【カリフォルニア大学サンディエゴ校 式】
犬の人間換算年齢 = 16 × ln(犬の実年齢) + 31
※「ln」は自然対数(底がeの対数)。スマートフォンの関数電卓機能で容易に算出可能。
この数式を適用すると、これまでの常識は鮮やかに覆されます。
- 生後1年: 16 × ln(1) + 31 = 約31歳(従来の7歳説とは24歳の開き)
- 2歳: 16 × ln(2) + 31 = 約42歳(従来の14歳説とは大きく乖離)
- 4歳: 16 × ln(4) + 31 = 約53歳
- 7歳: 16 × ln(7) + 31 = 約62歳
- 12歳: 16 × ln(12) + 31 = 約70歳
犬の年齢 7倍説の真相を暴いた本研究が証明したのは、「犬は生まれて最初の数年間で信じられないスピードで成熟し、その後は緩やかに老いていく」という事実です。1歳の小型犬が見せる活発さや感情の起伏は、思春期を疾風怒濤のごとく駆け抜けた成人期の入り口そのものであり、決して「7歳の人間の児童」ではないという認識の転換が現場の臨床獣医師からも強く求められています。